柔道整復の療養費支給申請(レセプト)の電子化に関して
柔道整復の療養費支給申請(レセプト)の電子化に関して
平成30年2月14日に『第1回 柔道整復システム委員会』(以下、当該委員会)が開催され、当会からは私、髙橋と金田が参加させて頂きました。
当該委員会では主に柔道整復の電子請求に係る意見交換が行われました。
上記について当会としての意見を記載したいと思います。
所感
まず『第13回 社会保障審議会医療保険部会』の資料中に記されていた、柔道整復療養費検討専門委員会の議論の整理に係る検討(案)にもあります様に、『現在、一部保険者と電子請求に係るモデル事業を実施すべく、調整を行っているところであり、引き続き実施に向け作業を進めている事。』『電子請求の導入に当たって、現行の療養費支給申請の流れや電子請求の導入に当たって検討すべき具体的な事項を把握するため、一部の保険者、一部の施術者に対して実態調査を開始したところ。』と改めての説明があり、電子請求をする・しないの議論は既に無く、将来的に電子請求が行われることが前提での意見交換会であったというのが率直な印象です。
当該委員会の現場でも質問をさせていただきましたが、電子請求をする前提がある場合に審査する側の懸念材料がいくつか有るので述べさせていただきます。
懸念材料
まず書類審査を行っているものに対しては、一般的にではあるが、事務作業の軽減や審査の簡略化が行なわれることがメリットとなり得ると考えられます。しかしながら柔道整復療養費検討専門委員会でも幾度も議論されている様に、業界における喫緊かつ大きな目標として『療養費の適正化』がある以上は、現行の受領委任契約、審査項目の維持を行わない事には、その適正化が担保されないのではないかと考えています。
近接判定などは電子化する事でエラーチェック機能を付する事も可能だとは思うが、(これに関しても傷病名コードの統一など課題は有り)現状、申請を審査する側は、負傷名毎の原因、長期理由、摘要記載といった文書を読むことから始まり、そこから傷病名や来院日数、来院間隔の妥当性などを総合的に判断する必要があります。
その上で書類の不備や不正請求を見つけていく事が主旨ですが、現行の療養費支給申請書をPDF化するだけでも容易にわかることで、前述した項目をパソコンの画面で閲覧したとすると、文章を読むことによる目の疲れや、ページ送りの手間による審査スピードの低下など、単純な事ではありますが、審査側に物理的な負担を強いる事になるのではないかというのが正直な印象です。
勿論、日数や部位数などの患者毎、院毎の簡易的な傾向審査や縦覧点検などは容易に出来る事になると想定している様なのでデメリットばかりではないのでしょうが、一般的な急性外傷の受傷状況や経過を踏まえての、負傷の仕方や転帰の付き方、来院間隔に対する傾向調査まで出来る様にならなければ、そもそも審査をする意味など無いと考えています。
総じてデメリットを上回るだけのメリットが無いという感想しか持てない状況でした。
厚生労働省への期待
療養費の適正化を担保しながら、審査側のみならず、施術者、患者の全てにおいて意味がある状態にするためには、高額の費用を捻出してでも(勿論そういった想定もあるとは思いますが)、高性能AIにおいて、文章は勿論の事、幅を持たせた縦覧点検や傾向審査を含めて、全ての審査項目が判定可能なレベルまで、機能を上げなければ成り立ちようがないと思うのですがいかがでしょうか。
署名一つをとっても、不正請求対策として来院毎の署名記載に関しても議論されている事に鑑みて、電子化したあかつきには、来院した事の証明を毎回できるような、例えば指紋認証や静脈認証の様な機能が付されなければならないとも考えます。
今回、そして今後も続くであろう意見交換を基に、ただ単純に電子化する事だけを目的とせず、情報を集約し、費用を掛けて、意味のある柔道整復の電子請求を実現していただくよう厚生労働省には期待しています。
平成30年2月17日
安全保障柔道整復師会 統括部長 髙橋 一旗